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令嬢は元暗殺者に恋をする
第87章 あなたの瞳におちて
「ハルが給士?」

「意外?」

「うん……少し驚いた。ハルがお客さん相手にお仕事するなんて」

 そっか、給士のお仕事か。
 それなら、すぐに決まるわよ。
 だって、それこそ外国のお客さんが来てもハルなら問題なく対応できるし、何より、ハル目当てにお客さんがたくさん集まってくると思うの。
 特に、女性のお客さんが……。

 そう思った途端、胸がざわついた。

 ちょっと心配だわ。
 ううん! 私ってほんとやきもち妬き。
 こんなんじゃだめね。それに、ハルはしっかりとこれから先の考えているのだもの。
 私だって。

「私も……」

 仕事を見つけて働こうかしら、と言いかけたサラの前に、すかさず、ハルは何やら分厚い紙の束を差し出してきた。

「この紙の束は何かしら」

「見てもいいよ」

 何か、嫌な予感しかしないのだけれど、と呟いて、サラはちらりと紙の束をめくり顔をしかめた。

「俺が作った問題集。明日から毎日一枚ずつ解いてね」

「ええ!」

 予想通りの反応だとばかりのハルの顔は、至極満足そうだった。

「同じものをキリクにも与えたから、明日から二人で勉強をすること。いいね」

「お屋敷を出たらお勉強から解放されると思ったのに……」

 だいたい、いつの間にこれを作ったというの? そんなことしている暇、全然なかったように思ったけれど。

「残念だったね」

「やらなければだめ?」

「だめ」

「……明日からでいいのね」

「今やりたかったらどうそ。つき合うよ」

 サラは顔をしかめて宿題の束を遠くへと押しやった。せっかくハルが作ってくれたものだけど、これは正直あまりありがたくない。

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