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−紅の雫−
第1章 −勝利の影で−
冷たい石畳に
水滴が落ちる音が響く。

遠くで
笑い声混じりの罵倒が聞こえる。

(……ナイル…ですか?)

罵倒の中に
聞き入った名前が時折聞こえ
今の自分と同じであろう事に
絶望を感じていた。

あれだけの手練が揃っていた筈なのに
嫌…自分だって弱かった訳じゃない。

繋がれた手首の鎖が
ジャラ…
と嫌な音を響かせる。

項垂れて
俯いた視線の先に
口元から流れ出した血液が
ポタリと落ちた。


(……ダリス…どうか…ご無事で…)


助けて欲しい訳じゃない。

騎士団率いるダリスだけが
今は頼りだった。


(……どうか…シエルを……守って……)


血が少し出すぎたのか
意識が徐々に遠退いていく。

目線を上げようにも
瞼が重くまともに開かない。

ジャラ……

と音を響かせて
アレンはそのまま意識を手放した。
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