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向日葵
第5章 愛し、愛されて
 帰り道は葉月が車の運転をした。
運動神経抜群の葉月は、高速を飛ばし、スリルを味わうかの様な運転をする。

 「明日からすみれは仕事なんだから、ゆっくりしていて!」
なんて優しい事を言う。


 人生が自分で終わらせる事が出来るなら今を選ぶわ。
目を閉じて、幸せな思い出が瞼を覆っている間に神様が心臓を止めてくれたらどんなに楽か……

 今なら愛する人の隣に居れる。

 私が私のまま終われるのに……

 人生は自分が思うほど、楽には終わらせてくれない。
心臓が締めつけられる程の痛みを感じても、変えられない現実は明日も明後日も生きてる限りずっとずっと続いてゆく。

 我慢していた涙が頬を伝う。

 「葉月……
結婚式を挙げる教会から花嫁を連れ去らって、手を握りながらラストシーンを迎える古い映画があったの。
私が小さな時、その映画がたまたまテレビやっていたわ。
一緒に見ていた母がこう言ったの。

 『綺麗なラストシーンだけど、無責任よね。
置いてけぼりになった花婿が可哀想だし、惨めだわ。
人を一人不幸にしといて、自分達が幸せになろうだなんて、そんな事は許されないわ。

 幸せになんてなれないからここで終わってるのよ!』ってさ…


 その時は、母の独り言なんて気にも止めなかった。

 だって、私はカッコイイと思ったから。

 でも、今なら母の言った意味が分かる。

 やって良い事、悪い事の区別はつけるべきだって。

 愛する人が決めた事を認めて、背中を押してあげる愛もあるんだって……

 だから、私は葉月を笑顔で……見送らないと……」


 泣いていた。
涙が止まらなかった。
手で顔を覆い、涙を隠しても後から後から溢れた。

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