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向日葵
第6章 逞しく生きる、女豹
 旅行以来、葉月と会えない日々は続いていた。
結婚式の準備や三島屋の女将修行で忙しい日々を送っている事は分かっていた。

 私も現実の自分と向き合う事で、考えても仕方ない事を紛らわせた。
社会人三年目の自分が、このアパート暮らしを維持してゆくには、働かなければならない。

 文章を書く事が好きな私は、せめて仕事くらいはそれに向き合えるものを選んだ。
残念ながら、大手の出版社の就職は叶わなかったが、タウン誌の編集部に拾って貰い、日々忙しく働いていた。

 街を自分で歩き、新規開拓の営業をする事もあった。
紹介したいお店探しや流行りものなどを探して記事にしていく事も任されていた。

 大変ではあったが、出来上がってきた冊子に自分の書いた記事が載る喜びは格別に感じた。

 三島葉月という大ファンが居ても、何一つ賞に引っかかる事もなく、趣味作家で終わってしまった私にとって、仕事は生き甲斐にもなっていた。

 仕事から帰り、疲れた時ほど、アールグレイの香りが恋しくなる。
 手間暇掛けて、葉月が淹れてくれた紅茶を見よう見真似で淹れて三島屋のお菓子を食べた。

 葉月の誕生を祝って作られた水饅頭の葉月は、黄桃が満月の形に彩られている。

 水饅頭の皮の甘さと黄桃の香りや味が口の中で一体化し、葉月そのものを示すかの様に私の口の中で蕩けてゆく。

 貴女の居ない時間も、私は貴女を思い出し、面影の中に居た。
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