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続「辿り着く 先には」
第3章 『支配』
お昼はお土産屋のスペースの中で食べて、そのあと少しだけお店の中を見て回った。楽しく時は過ぎるのが早い。午後の三時も回れば、否応なく帰りの事を意識してしまう。あんなに話していた絢音が大人しくなったのを感じて、自分の気持ちも重たくなる気がした。

「そんな顔をしいへん約束や。楽しいことを考え、言うたのは絢音やよ。」

それに笑顔を作る努力をした。だが、上手くいきそうになくて、顔をそらした。その顎に手を掛けられる。体が先に反応を示すようにされていたので、下半身に力が入った。それを目にしていつもの笑みを浮かべる聖、それは絢音の視界に入ってため息をつきつつ言葉を紡いだ。

「いつもの顔で、余裕に笑って。聖には距離は大したことが無いのね。」
「いつも、一緒にいたい言うたけどな。このまま此処に居たらええよ。そしたら、そんな顔をせんでも良くなる。」それに驚いた顔をする。時折病気のせいなのか、無理難題な事も平気で口から出た。それがさも当然であるように。
「そんなの、出来るわけ無いわ。あちらにも生活があるもの。今が幻とは言わないけれど、帰らないとならない。」

それに、雲ぐった顔をしたのは聖の番だった。突き付けられる現実を受け止める事は、鬱病の人間にとっては苦しみでしかなかった。はっとして、気付いたときには遅く無表情のまま車に戻ろうとしたのを追い掛けた絢音。

夕日は容赦なくやって来る。風も少しずつ冷たくなってきた、まるで今の二人の心のように・・・距離を縮めたくて手を伸ばした。背中に追い付いて、抱き締める。震える手と心が痛い。

「ごめんなさい、今は楽しい気持ちだったのにこんなことを言って。聖が、辛くなるのも分かっていたのに自分の事を我儘を言って。」うなだれていた手をゆっくりとあげて、その震える絢音の手を撫でた。小さな手だと、そう思った。悲しいことも苦しいことも、この女も耐えてきたんだろう。一度だけ、深呼吸をして心を整えた。

「残りの時間を楽しむことを考えぇ、僕は大丈夫。ただ、もうこの話は無しや。今しか、時間がないなら絢音を愛したい。そして、もっと感じたい。」背中から痛いほどに、強い愛を感じる。抱き締められた時も感じた。
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