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明治鬼恋慕
第11章 夜叉

縄で縛られ蔵に閉じ込められていた焔来は、つい先ほど、蔵からこの部屋に運ばれてきたのだ。

彼は下向きにうずくまり

荒い呼吸を繰り返している。


「…ハ…ァっ!……ぅ……!! ぁぁ…」


又左衛門がそうするように指示をしたので、焔来の縄はすでに解かれていた。

つまり身体を拘束する物は何もないわけだが、…しかし逃げ出すような体力は彼に残っていない。


「ふん……苦しんでおるな」


そしてそれを承知しているからこそ、又左衛門はわざわざ縄を解かせたのだ。


「全身を蝕む( ムシバム )痛みはどうだ?──…と言えど、すでに意識はないようだが」

「…はぁぁ…ッッ……く…」

「痛みに堪えるために自我を捨てるというのは、確かに賢い選択であろう」


又左衛門が声をかけるも、焔来には届かない。

狂骸湯を飲んだ鬼が激しい苦痛のため気を失うというのは、よくあることではあった。


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