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小鳥遊医局長の憂鬱
第10章 Honeymoon
食事を済ませ,ホテルの屋外プールへ行くと白いリクライニング・チェアに腰掛けた。

「なんでビキニじゃ無いんですか?」

冬の黒いワンピースの水着を見て悲しそうに小鳥遊は本を開いた。

「嫌よ…日本人が居たら恥ずかしいでしょう?」

家族連れやカップルが水辺で日光浴をしながら音楽を聴いたり、本を読んだりしていた。

「僕の為に着て欲しかったです。ワンピースは嫌い。後でモールへ出て買いに行きましょう♪」

冬はその理由がわかって笑った。

「人がいっぱい居るんだから海の中でじゃ出来ないわよ。」

冬は日焼け止めをたっぷりと塗った。

「やってみなくちゃわからないでしょう?」

小鳥遊は本から眼を離さず静かに言った。

「嫌よ。捕まったりしたら面倒だもの。だったら葉山でしてみれば良いじゃ無い。」

サングラスを掛けて寝転びまた笑った。

…なんか…またなんかに目覚めた?

周りは空いているのに,ひとりの白人男性が小鳥遊の隣に座った。年齢は、小鳥遊よりも上のようで、少々お腹がぽっちゃりとしていた。挨拶をすると小鳥遊は再び眼を本へと戻した。小鳥遊越しにチラチラと冬を見ていた。冬もその視線に気がついたが、何をしてくる訳でも無いので、二人とも静かに日差しを楽しんでいた。

「ちょっと飲み物を買ってくるわ。」

冬は椅子を離れ、売店へと向かった。それを待っていたかのように、白人男性が小鳥遊に声を掛けてきた。

「調子はどうだい?」

男性は陽気に小鳥遊に声を掛けた。

「ええ。まぁまぁですよ。あなたは?」

本から目を離し、小鳥遊は男性を見た。

「ええ。良いですよ。」

男性が、プールの反対側を見ると、それに気が付いた2-30代と思われる若い女性が手を振った。

「僕は、会社の経営をしているんですがね、妻とハネムーンに来ています。」

「そうですか。」

小鳥遊は愛想よく答えた。短い沈黙が続いた。

「あなた達は、昨日の晩、ベランダで…。」

その後は言葉を濁したが、小鳥遊はすぐに眉を顰め不快感をあらわにした。

「あの…ご相談なんですが、もしあなたとあなたのパートナーさえ宜しければ、4人で…どうでしょうか。」

小鳥遊は驚いて思わず、プールの反対側で笑う男性の妻を見た。









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