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小鳥遊医局長の憂鬱
第10章 Honeymoon
「あなたも…僕と同じように随分とお若い方と…。」

…トロフィー・ワイフか。

「残念ながら、僕の妻は若くは見えますけれど、僕と一回り程年齢が離れているだけです。」

男性は驚いた顔をした。冬を見ると売店の隅で、若い男2人組に声を掛けられて何か話していた。

「それで…僕の妻が、あなたのことを気に入りましてね…もし宜しければ…。」

冬がこちらに戻って来るのが見えた。

「残念ながら、僕たちにはそのような趣味はありませんので。それに僕たちもこちらにはハネムーンで来ているんです…ですので折角のお誘いですが、済みません。」

「そうですか…それは失礼いたしました。お気が変わったら僕たちは●●号室に宿泊してますので。」

男性は、こちらにやって来る冬にHiと声を掛け、冬も親し気な笑みを浮かべて答えた。

「ガクさんのお知り合い?」

冬は買って来たボトルウォーターを小鳥遊に手渡した。

「いいえ。ただ世間話をしていただけです。」

「そう…。」

冬はまたリクライニングのチェアに腰かけた。

「トーコさん。やっぱり水着を買いに行くのは止めましょう。」

少し不機嫌な小鳥遊を冬は訝し気に思った。

「ええ別に良いけど…どうしたの?」

冬は小鳥遊の顔を覗き込んだ。

「いえ別に…。あなたと僕とは随分と歳が離れているように見えるらしいです。」

独り言のように呟くと、若い女性の隣に戻った男性を眺めた。男性が女性に何か話すと、女性は怒ったように席を立つとホテルの中へと一人戻ってしまった。

…ハネムーンの癖にスワッピングだなんて。

小鳥遊は一瞬呆れたが、そういう自分だって、奇妙な関係を続けているし人の事は言えない気がした。ただ冬と自分との関係が他人からは、そう思われることがあるのかと思うととても不愉快だった。

「ガクさんどうしちゃったの?」

不意に小鳥遊は横たわる冬に熱い口づけをすると、ちょっと驚いた冬は白い歯を見せて笑った。


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