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変質者の手毬唄・珍田一耕助シリーズ
第10章 「第2の犠牲者」
「でも…あの子は、口もきけないですしとても嫁に出せるような娘などでは…」
「それは僕にとって大きな問題ではありません…それより…」
「それより…?」
「問題なのは凛さんの胸の奥にある、お父さんに対する想いが大きいのです」
「亡くなった主人の…?」
珍田一は黙ってひとつ頷いた
「では、聞きたい事というのは…」
「はい、敏夫さんの事についてです」
その時…珍田一には女将が一瞬狼狽したように見えた
やはり、敏夫さんの死には何か秘密がある…珍田一は、そう確信した
女将から聞き出すことが出来たのは、敏夫の復員した正確な日時や戦争で受けた負傷による障害の度合いについて…から始まり、日頃の習慣や交友関係、そして亡くなった日の事…と続いた
しかし、肝心の敏夫さんを呼び出した人物の名前が出てこなかった
女将は夕食の後片付けで忙しかったので、訪問してきた人物が誰だか見ていないというのである…
おそらく女将は呼び出した人物を知っている…
知っていて隠しているのだろう…珍田一は、そう確信していた