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不知夜月(いざよいづき)の夜に――
第2章 三日月

新月のあの日から数日が経っていた


最寄り駅からの帰り道に
あのコーヒーショップの前を通った


あれから何と無く
彼女の事が時々頭に浮かぶ


店の前で別れた後
本屋で買った新刊も
同じページを読み返したり
ストーリーが頭に入らなかったり
中々進まずにいた


あれ程待ち遠しがった本だった筈なのに…


彼女の悲しげな顔は浮かばないのに
一瞬見せたあの華やかな笑顔が
はっきりと蘇るのだ


好きになったとかではなく
別れた君と重なっているのだと思っていた


彼女 まだ落ち込んでんのかな?
そんな事を考えながら店の前を通りすぎようとして――


カウンターに彼女の姿を見付けた


肘を付いて俯いたまま
カップに向けた視線を外そうともしないで…


"これはかなり落ち込んでるな…"


そう思った途端
僕は店に入っていた


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