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あなたが教えてくれたこと
第9章 9
智哉が正解に辿り着けたのは五分後だった。
そこでようやく休憩となる。

休憩時間も息子は遼平とばかり盛り上がり、紫遠は笑って相槌を打つ程度だった。
でもその時間が愛しかった。このまま三人で暮らせたのならば、本気でそんなことを考えるほどに。

「じゃあ宿題、頑張って」
「うん」

仮初めの幸せは当たり前に終わりを告げる。
彼の目を見詰めていると遼平も視線を重ねてきた。
静かに微笑んだその瞳に、心が愛撫された気持ちになる。

「お気をつけて」
「はい」

短い挨拶のあと、家庭教師は玄関を出て行った。
時刻は夜八時半。夫は今夜も帰りが遅くなりそうだった。
智哉はそのまま風呂に向かい、紫遠は片付けをしていた。
義父の冨士雄は紫遠を避けるようにしており、彼女の姿を見ると煙たそうに自室へと戻っていく。


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