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禁煙チュウ
第7章 お泊り
「うわぁ…」
思わず声が出た。
ロフトはものすごく居心地が良さそうな寝室になっていた。

小さな本棚、間接照明、マットレスの上に大きめの布団。ここにも床にはラグが敷いてあって、まるで温かい巣穴みたい。

足を踏み入れ、ラグに座り込んで見回す。本棚にはお酒の本や経営の本が並んでいて、さすがにbarの店長だなと思った。ちゃんと勉強してるんだ。そりゃそうか。

あとは布団の脇に小さな丸い機械があった。多分星空を天井に映すやつ。ロマンチック。意外。
……雪野さんかな。
あとで付けてもらおう。

ふわぁ、と欠伸が出た。時計はもうすぐ5時。眠いのと緊張で、頭が変だ。なんかぼわぼわする。
ドサッと上半身を布団に投げ出す。
ズルッと短パンがずり落ちたので、もう脱いでしまうことにする。上が長いから膝上まであるし、いいや。
素足でラグをスリスリして感触を楽しむ。

すぅーと息を吸い込むと、布団から宮田さんの匂い。
いい匂いなんだよなぁ。クンクンしているとなんだか安心してきて眠くなる。
つい目を閉じたら、眠ってしまった。





「おーい」
と声が遠くから聞こえた。
んー。まだ眠い。

「なんで短パン脱いでんだよ、もー」
足丸出しかよ無防備かよ、とブツブツ言う声。

ふっと体が軽くなる。そぅっと動かされて、ふわふわいい気持ち。体を力強い腕が支えてくれる感覚。
小さいときにお父さんによくされたような。リビングで寝てしまったわたしをベッドまで運んでくれた優しい腕。

バサバサ音がしたあとまた持ち上げられる。あー。いい気持ち。

わたしは目を閉じたまま、腕の主に抱きついた。

「お、わっ!」
バランスが崩れて落ちるかと思ったら、背中に回された腕がぐっと硬くなって、わたしの背中はふんわりと布団に下ろされた。

「うふふ」
心地よくて笑ってしまう。
「石井? 起きてる?」
真上から声がかかる。耳によく馴染んだ低い声。
わたしの好きな人の声。

パチリと目を開けた。
薄暗い部屋の天井をバックに、宮田さんの困った顔が至近距離にある。

わたしの好きな人の顔。

わたしはぼんやりした意識のまま、宮田さんに巻き付けた腕を引き寄せてキスをした。


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