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恋はいつでも平行線【完結】
第19章 *十九*
     *

 食事が終わってお茶を飲んで、一段落したところで、雪さんに縁側に誘われた。
 陽が当たっていたけれど、ほどよく日陰になっている場所に促され、隣り合わせで座った。

「柚希さま、先ほどの見ましたね?」

 先ほどのってのは……えと、あれですか、上半身が水みたいになっていたの?
 これはうなずいた方がいいのか、見ていないと言い張った方がいいのか。
 答えに窮していると、隣で雪さんが笑った気配がした。

「……秘密にしておかなければならなかったのですが、あなたがあまりにも美味しそうなのがいけないのですよ」
「美味しそうって言うけどっ! わたしは食べ物じゃないです!」

 雪さんを見るのが怖くて、視線を庭先に向けたままそう反論すれば、雪さんはまた、笑った。

「これを知っているのは、前の奥さまと、奥さまだけです」

 前の奥さまとは、祖母のことだ。奥さまは母。

「神田家の当主のみが知っていればいいことですから」

 そういうと、雪さんはわたしに身体を寄せてきた。
 反射的に身体がかたくなったことに雪さんは気がつき、苦笑した。
 それでも雪さんはわたしの肩に手を回し、抱きしめて来た。

「これから話すことは、口外しないでくださいね」

 雪さんはわたしの耳元でそう囁くと、耳たぶを食んできた。

「ゃ……んっ」

 だから雪さん、どうしていちいちそういうことをしてくるのですかっ!

「柚希さまの蜜、予想以上に甘くて美味しくて、止まりませんでした」
「いや、だからっ! そういう恥ずかしいこと、言わないで!」
「いえ、事実ですし、しっかりと把握しておいてもらわないと、困ります」

 困るって言われても、困るのはわたしですけど。

「まったく自覚がないようですから言いますけれど、柚希さま、あなたは私たちのようなモノに好かれる、甘い体液の持ち主なのですよ」

 ……私たち……の、ような、モノ、とは?

「柚希さまは、神田家がどういった家か、把握されていますよね?」
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