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篠突く - 禁断の果実 -
第11章 過去編四話 苦悩 (後編)

 ◇◆◇

 ――おいで。
 そう手招きされた孝哉は、コートを脱ぎ捨て、悠の背中を搔き抱いた。
 姉さん、大事な話がある。このまま、聞いてほしい。孝哉は彼女にそう告げた。

「……一週間くらい前、クラスの女の子と付き合うことになったんだ。林さんっていう子。ほら、前に話したでしょ。うざいくらいに話しかけてくる子がいるって。その子が林さん」

 そうだ。孝哉が父母に虐待されていることを知ったあの暑い夏の日、彼はそんな話をしていた。

「彼女のほうから告白してきて、それで」
「……そんな話、するために来たの?」

 悠は孝哉の言葉を遮り、不機嫌そうな、冷ややかな声音で言った。

「違うよ……いいから最後まで聞いてよ、姉さん」
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