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篠突く - 禁断の果実 -
第12章 過去編五話 初めての
 孝哉は、ごくりと息を飲んだ。自分と同じではないか。言葉は違えど、やっていることは同じだ。

「嫌って言ったら、なんでって聞くのよ。俺に抱かれて嫌な女なんていない。まさにそんな間抜けた顔してたわ。私は本当に嫌だったから、こてんぱんにぶちのめしてやろうと思った。でも、相手は男。力じゃ、女の私は敵いっこない。ちんけなプライドをぶちのめしちゃったら、何されるかわからないもの。だから言ったのよ。あなたの元カノが、よりを戻したがってたって。その子、可愛い子なの。彼好みのね。アイツからフったんだから、食いついてくると思った。でも……私が甘かったのね」

 悠の両腕が、天井に向かってゆっくりと伸ばされる。空を掻いた手は、直後、勢いよく彼女の上に落ちて、そのか細い首を掴んだ。

「下手な嘘吐いてんじゃねぇよ、俺とヤりたくないからかよ。アイツは首を絞めてきた。前から思ってたんだ。この歳なのに、弟とすげぇ仲良いよな。そう言ってから、アイツは手を離して、私をベッドの上に突き飛ばした。咳き込んで苦しむ私を見ても、アイツは容赦なんてしなかった。抵抗できない私に馬乗りになって、こっちの頬をビンタして、こっちもビンタしてきた。殴りながら、リビングにいるあんたに聞こえないように、アイツは言った。……お前、本当は俺じゃなくて、弟のことが好きなんじゃねぇの」

 言葉を切ると、悠は漸く首から手を離した。
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