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淫欲の果てに。人妻・怜香32歳の記録
第2章 漆黒の扉に導かれて
「冬木さん、お久しぶりです。今日は何飲まれますか?」
「ブラックラベル、をお願いしようかな。」
「かしこまりました。あっ冬木さん、こちらは怜香さんです。今日初めていらしてくれたんですよ。」

男性が、こちらへ視線を向ける。
吸い込まれそうなほど深く大きな瞳が私の方へ向けられ、アルコールであたたまった身体が一瞬強張り、緊張のようなものが走った。

「怜香さん、ですか。初めまして、冬木と言います。」
「初めまして。あの、私、今日このお店ははじめてなんですよ。たまたま通りがかって、良さそうなお店だな、と思って入ってみたんですよ。」
「そうですか、初めて。」

男性はタバコに火を着けゆっくりと吸うと、私とは反対方向へ煙を吐き出す。私に煙が来ないよう配慮してのことだろうか。着火の仕方からタバコを吸う手つきまでがとても美しく、思わず見入りそうになってしまった。
透き通るような白さと繊細さのある肌をしているものの骨ばった大きな手に、男性らしい強さを感じる。

薄暗い雰囲気と、男性と隣り合って会話をするといった久しぶりに体験するこの状況に、やはり自分は微かに緊張しているのだろうか。喉の乾きがまたやってくる。
空になったグラスに気づいた皆瀬さんに次のドリンクを聞かれると、先ほどと同じものをお願いする。
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