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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第9章 しのちゃんの受難(五)

 触れた瞬間に、体が歓喜した。心が満たされた。渇きが嘘のように収まっていく。
 もう本格的に、私の心と体は里見くんを迎え入れるつもりらしい。

 ……まずい。これは、止まらなくなるかもしれない。

 里見くんの唇は、少し弾力があるけれど、全体的に薄め。
 私の唇に、噛み付くようなキスをすると、ちょっと痛い。
 里見くんに吸われて、唇がぷるりと震える。

「柔らかい」

 唇の弾力が気に入ったのか、里見くんが笑う。トマトソース味のキス。歯を磨いてからにしたほうが良かったかな。

 と。
 ちょっと、里見くん!?
 も、駄目だっ、てば!

「もっと、いい?」

 私の返事を聞かないまま、里見くんはキスを落としてくる。
 唇が何度も重なり、吐息が絡む。
 胸を押しのけようとしたけれど、私の腰に回された腕はびくともしない。

「小夜、もっと」

 息継ぎの合間に零れる甘い声に、体が痺れる。
 里見くんが望んでいることはわかるけど、わかるけど……っ、ちょっと、がっつきすぎ!

「さ……っん!」

 里見くん、ストップ。
 止めようとしたのに、その瞬間を狙って、里見くんの舌が素早く侵入してくる。油断した!

 熱い舌が私の口内を侵す。
 緩く動いて私の舌を見つけると、嬉しそうにちょんちょんと舌先で触れて、ぐっと絡めてくる。
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