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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第1章 しのちゃんの受難(一)

「セックスはいつしますか?」
「稲井くん、あとで職員室に来なさい。まぁ……私は大人なので、両者の同意さえあればいつでもオッケーです」

 生徒たちから歓声があがる。
 下手に隠したりはぐらかしたりすると、あとが大変だ。噂に尾ひれや胸びれまでついて回り、他の先生や保護者にまでおかしな噂が広まり、収拾がつかなくなる。
 だから、今、彼らの興味を満たす必要性がある。

「淫乱」

 ぼそりと聞こえた台詞が、女子のものか男子のものかはわからない。けれど、誰の耳にも聞こえ、場が凍りつくくらいの破壊力はあった。
 しんと静まり返った教室内で「誰が言ったの?」と皆が目を見合わせる。犯人探しなんて、別に必要ないのに。かわいい子たちだ。

「淫乱ですか……大人の女としての褒め言葉ですよね。ありがとうございます。この歳で純情ぶっても、仕方ありませんからね」

 余裕ぶってはみたけれど、果たしてこの対応が正解なのか不正解なのかはわからない。
 あんまり過激なことを言うと保護者からクレームがつく。それを恐れているわけではないけれど、毎年「あの格好をやめさせろ」「教師失格!」とクレームがついてもどこ吹く風の歩くエロこと木下先生ほどの図太い神経も、私は持ち合わせてはいない。
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