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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第12章 しのちゃんの受難(七)

「すみません、勝手に注文してしまって」
「大丈夫。ランチとブレンドの予定だったから」

 聞きたいことがありすぎる。
 ありすぎて、何から聞けばいいのか、わからない。
 幸いにも私たち以外に客はいない。ゆっくり話はできそうだ。

「そ……里見くん」
「はい」

 個室には六人掛けのテーブルと長椅子がある。たまに学園関係者が打ち合わせをしたり、話し合いをしたり、ということに使われているようだ。本当に、たまに、だそうだ。
 テーブルの上にグラスだけ置いて、私は対面に座る恋人を見つめる。

 さっき「教育実習先の教師と実習生」で話が通ったから、恋人同士ではなく教師と実習生で話をしなければならない。口調を変えよう。

「里見くんは……実は私のストーカーだったんですか?」
「そう思われても仕方のないことは何点かしています」
「……やっぱり」

 私が玉置珈琲館によく出入りしていることくらい、国語準備室のコーヒーを見ればわかる。ここの住所と名前入りの紙袋も置いてあったし、そこから割り出したのだろう。

「ここにも通っていたんですね」
「小夜先生とニアミスしたこともありますが、多くはありませんよ」
「声、かけてくれたら良かったのに」
「一度振られていますからね。そう簡単には声はかけられません」

 淡々と、静かに会話が進む。
 宗介は「聞きたいことがあるなら聞いてください」とでも言いたそうに、笑みを湛えたままだ。
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