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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第12章 しのちゃんの受難(七)

「はい、Aランチ二つ。食後にブレンド持ってくるわね。で、里見さんはようやく小夜ちゃんの彼氏になれたの?」
「はい、ようやく」
「へっ!?」
「あらぁ! おめでとう! 長いこと頑張った甲斐があったじゃない!」
「ありがとうございます。頑張りました」
「はっ!?」

 私の頭の中はパニックだ。
 おばさんにもいろいろバレているのは、なぜ!? なんで!? どうして!?

「奥さんも協力者だから」

 サラダにゴマドレッシングをかけながら、宗介はこともなげに私の疑問を払拭した。
 バレていたなら、敬語は必要ない、か。さっきまでと同じように喋る。
 さっきから、「里見くん」でなく「宗介」が出てきてしまうから、本当に困っている。
 私、明日から大丈夫だろうか?

「学園内だけに協力者がいると思わないほうがいいよ。外堀は、埋められるだけ埋めてあるから」
「うわぁ……怖い」
「小夜は本当に鈍感だったね」

 うわぁ、酷い。
 白身魚のフライにタルタルソースをかけて食べる。んー、美味しい! 美味しいのに、何だか、食べている気がしない。いろいろ衝撃的すぎて、味がわからないよ!

「まさか、梓も?」
「ええ、もちろん。学園長代理の許可は一番必要だったから。去年、実習の内諾をいただいたときに、話は通してあるよ」

 だから、今年に入って「高村礼二と別れろ」としつこく言ってきていたのか! 宗介とくっつけるために!
 まさか、宗介に注目させるために、「依頼」をしたの!? あのとき言っていた「お見合い」も、相手は宗介!?
 やだ、もう、誰も信じられない!
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