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君がため(教師と教育実習生)《長編》
第12章 しのちゃんの受難(七)

「……宗介が、手慣れているなって、思って」
「へぇ……なるほど。なんでなのか知りたいって思ってる?」
「いや、知りたいような、知りたくないような……すごく複雑な気持ちで」
「じゃあ、知らなくていいよ。俺は小夜だけ好きだから」

 微笑まれると、それ以上は聞いちゃいけないのかな、なんて思ってしまう。視線をさ迷わせてうずうずしていると、宗介が苦笑する。

「今までに付き合った人はいないよ。小夜が初めて。でも、経験はある、で答えになる? 相手は――」
「じゅ、十分です……!」

 宗介は私の様子を見ながら、ニヤニヤと笑う。
「そんなことを気にしていたの?」と問われると、本当に恥ずかしくて仕方ない。自分のことを棚に上げて、と思ってしまう。

「俺の相手のことが気になるなら教えるけど、別に大したものじゃないから」
「……うん、大丈夫」
「今は……これからは、小夜だけだから」

「心配しないで」と言われてようやく落ち着く。相手はプロの方なんだろうなと想像してみたりもしたけれど、もう考えないようにしよう。
 知りたくて仕方がなくなったら、聞こう。今は、いいや。

「ありがと。大丈夫だから」
「うん」

 大丈夫。不安なことは聞けばいい。
 宗介はちゃんと応えてくれる。
 礼二みたいに、嘘で誤魔化したりしない。それだけはわかる。

 元カレと今の彼氏を比べるのは、本当に失礼だと思うけど、比較対象がそこにしかないの。少ない情報でいろいろ考えなきゃいけないの。ごめんね、宗介。

 でも、礼二が最悪だったから、相対的に見るとすごくいい人に見えているから、宗介。世間的に見ると――アウトでも。

「……勃った」
「……」

 世間的に、アウトでも、ね。
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