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誰よりも君を愛する
第26章 亜矢子のお部屋

一輪のバラが置かれたテーブルに亜矢子の作った料理が並び
良雄がグラスにワインをついでくれた。

『亜矢子、乾杯しよう(笑)』

『はい』

『亜矢子誕生日おめでとう』

『ぇ?ああ、誕生日‥忘れてました‥』

亜矢子は自分の誕生日をすっかり忘れていた。

このひと月、色々な事があり、必死に良雄の事だけを考えて、日々募る体の疼きに耐えて‥工事の男達に気を使う日常の忙しさで自分の誕生日などすっかり忘れていたのだ。

『プレゼントを色々考えて亜矢子のために部屋を造ったんだ(笑)』

本当なら今日は二人の結婚式を行うはずだったのに…良雄はその言葉を飲み込んだ。
思い出せば今でも抜けない心に刺さった棘がジクジクと疼き、その疼きは意地悪く亜矢子を傷つけてやりたいという衝動に変わりそうになる。

良雄は時々亜矢子を愛し過ぎる自分が怖くなる。溺愛している内は良かったが嫉妬と執着が芽生えてからは
それを自覚していても歯止めをきかせられなくなってきている。

『部屋見に行くかい?』

良雄に手を引かれて渡り廊下のドアを開けると今までなかった所に白いドアが出来ていた。

『亜矢子が開けてごらん(笑)』
亜矢子は良雄の顔を見つめゆっくりドアを開けた。

『わあーっ素敵っ』

部屋に一歩足を踏み入れるとフワッとした感触によろけそうになった。

床一面にワインレッドの毛足の長い絨毯が敷き詰められていた。

『ここでは亜矢子が素足で過ごせるようにね‥』

『あ、あのベット、もしかして?』

『そう、旅館にあったローベットだよ‥気に入ってただろ?探したんだ(笑)』

亜矢子は余りの贅沢さに驚きっぱなしだった‥
小さなソファーやテーブル、小型の冷蔵庫まで揃っていた。

『あちらのガラスは‥』

ベットの奥にガラス張りで仕切られた部屋があった‥

『お風呂だよ(笑)浸かって直ぐ寝られるからね』

ガラス張りの広い風呂場は真っ白な人工大理石で出来ていて壁に取り付けられたガラスの棚には小さな観葉植物と綺麗なボトルや小瓶が並べられていて甘い香りが漂っていた。
その片隅にはトイレも備えてあった。

『ホテルのスイートルームみたいですねぇ、私の為に?』

『まだあるよ(笑)』

風呂場とは逆の壁にはもう一つドアがあった。

『ここを開けると~』

壁のボタンを押すと自動ドアが開いた。

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