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誰よりも君を愛する
第34章 嫉妬②
ひと月前に五年ほどの地方勤務から本社に戻った事を自慢気に言ってきた‥
『ところで橋下さんはどちらの医学部ですか?』
『○大ですが‥』
大学名をひけらかすのは好きではないが自慢話ばかりしている和也に頭にきていた良雄は隠さずに答えた‥
それを聞いた和也の背筋がシャキンと伸びたのが面白かった‥
『ええっー?あの○大医学部ですか?ええーっ天下の○大ですかー?すっげえ‥』
『和也君の会社も結構ウチの出身多いでしょ?』
『あ、はい。直属の上司も○大で‥アハハハっ』
良雄は知り合い数人の名前をあげると和也の顔色が見る見る変わった‥
(セコいやり口だが‥勝ったな‥)
『旦那様ぁ‥そろそろ帰りたいな‥お母さん、唐揚げ少しもらっても良い?』
『あら、せっかくカズ君が帰って来たのに?』
『カズお兄ちゃん、ごめんなさい‥私も旦那様も用事があるのォ‥私も主婦業が忙しいのよ、お母さん。』
亜矢子はちゃっかりちらし寿司と唐揚げをお土産に貰い、和也とは名残惜しむ訳でもなくアッサリと別れの挨拶を済ませて車に乗り込んだ‥
『お義母さん、ご馳走になりました。近い内に結婚式の事でご相談に伺います。お義母さんも遊びにいらして下さい。』
『ええ、そのうちに。でも亜矢子が幸せならいいの。‥お式はお任せするわ‥』
和也はすっかり意気消沈したのか、でしゃばることなく亜矢子の母親の後ろで手を振っていた。
帰りの車中、亜矢子の膝の上の包みから唐揚げの良いニオイがした。
『唐揚げ食べたいな‥アーン‥』
『良いですよ‥はい、アーン(笑)』
(お義母さんの唐揚げ本当に美味いな‥)
あれ以降、和也が亜矢子の母親を使って亜矢子を誘うようなことはなかったし、亜矢子は益々甘えん坊になった。