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誰よりも君を愛する
第36章 愛憎


毎年夏になると小さな花が細い枝いっぱいに咲きゆらゆら風に揺れると猫が遊んでるみたいね‥と両親が話していた。

その話しを聞く度に良雄は子猫を思い出し心のどこかで母親を恨んでいた。

『お前は勉強が出来て変に大人びてたから困っても人に頼る事がなかった。全部1人で決めて、子猫もそうだ。飼わせて下さいと頼めば許したのに‥』

『言ったよ‥』

『母さんに子猫が見つかったから仕方なくだろ?順番が逆だろう?結婚もそうだ‥亜矢子さんやあちらのお母さんの事を考えたか?
一事が万事、いつもそうだった。何もかもお前が自分勝手に決めたんだろう‥。』

良雄は図星だった‥

いつの間にか亜矢子は義母とキッチンで夕食の準備を始めていた‥

良雄は父親と庭に出て花が終わり葉だけになった小手毬の木の下の子猫に手を合わせた‥

『ごめんな‥』

『良雄、もう少し人や親を信用して、妻を信用して生きてみろ‥もっと幸せに暮らせるぞ‥』

『出来るかな‥』

『少なくとも亜矢子さんなら信用出来ると私は思う。お前も近い将来親になる‥変われるさ‥』

良雄が子供の頃に負った小さな心の傷が少しずつ小さくなっていった‥

亜矢子への愛情が純粋な愛ではなく強い執着心と独占欲、それに付きまとう嫉妬と猜疑心ばかりだったと気づいた‥

『よく母さんとこんなに長く夫婦続いてるよな‥』

『愛情とは思い遣りさ。愛してるなんて口で言ってるようじゃまだまださ‥』

その時窓が開いて亜矢子が顔を出した‥

『もう暗いじゃないですか!お二人ともご飯ですよ~』

良雄は亜矢子の明るい笑顔を見て安心した。
そして何よりも嬉しいと改めて思った‥

こんなにも心を温かくしてくれる亜矢子の笑顔をいつまでも絶やさないようにしたい‥

『ああ、今行くよ亜矢子』

亜矢子は夫と義父を早く、早くと猫のように手招きした‥

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