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誰よりも君を愛する
第36章 愛憎

夕方まで眠ってしまった2人は電話の音で目を覚ました。

それは友人達と旅行を楽しんで帰って来た今日の事情を何も知らない良雄の母親からだった‥

『ああ亜矢子さん?お土産買って来たの、渡したいからこれから遊びに来て、待ってるわね‥』

義母からのせっかくの誘いを断る事も出来ず、しかし義父にどんな顔で会えば良いのか亜矢子は悩んだ‥
良雄も同じで気が進まない‥

『やっぱり今日は断ろう‥』

『でも‥。いいえ、行きましょう、お義父さんも心配なさってるはずだし‥』

実家に向かった2人を玄関の外で待っててくれたのは父親だった‥

『父さん‥』

『後にしろって母さんに言ったのに‥すまんな。』

良雄の後ろに隠れるように立っていた亜矢子を義父は優しい笑顔で迎えた。

その笑顔を見て涙ぐむ亜矢子の頭を撫でてやった。額を義父の肩に乗せて泣く亜矢子に義父は謝った。

『嫉妬深い息子でつらい目に合わせたね‥すまない』

『ごめんなさいお義父さん‥ご心配おかけして‥』

家に入ると良雄の母親はズラリと海外土産を並べて待っていた‥
『亜矢子さんにバックを買って来たわ』

亜矢子が並べてあるお土産を見ているとそこへ綺麗なブルーの目をした真っ黒な猫がトコトコ歩いて来てそばにちょこんと座った‥

『猫!どうしたの?母さん猫嫌いじゃなかったの?』

『あらん、私は猫大好きよ、このクロはいつの間にか居着いちゃったのよ、』

良雄は子供の頃に可愛がっていた子猫を母親に捨てられた事を思い出し無性に腹が立った‥

『じゃあなんであの時僕に内緒で子猫を捨てたんだよ!』

『ぇ‥?あぁ、あのこね‥』

母親は困った顔をして夫の方を見た‥

『良雄、あれは‥子猫は母さんが捨てたんじゃないんだ‥お前が学校に行ってる間世話してたのはむしろ母さんなんだぞ。』

『ぇ?どうゆうこと?』

『お前は飼い方も知らないで部屋に隠して‥トイレや水やりも母さんがやってたんだ。』

『知らなかった‥』

『今だから言うが‥お前は子供だったのに自分勝手に猫を拾ってきて勝手に部屋に置き去りにしてただろ‥いなくなったあの日、母さんが見に行くと子猫はお前が使っていた凧糸にじゃれて遊んでたんだろうな‥首に絡まって亡くなってたんだよ‥』

『嘘‥』

『ごめんね、良雄‥言えなかったのよ。あの小手毬の木の下がお墓よ。』
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