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獣戦記 §ju-senki§
第4章 忘れていた記憶
「アトラ様に…ムツキ殿、を…?」
苦い顔をして頷くグレン
アトラの評判はレアンが一番よく分かっている
確かに頭の切れる、強い王だ。しかし支配欲が強く、領土を拡大させるため頻繁に戦争を仕掛ける。それに女を食い漁り、ぼろぼろになるまで奉仕させては棄てる、といった評判も出回っていた。
そのような王にムツキ殿を…
レアンはグッと拳を握った
「その話、王にはしたのか?」
「いや、まだだ…」
「その話…長くなってしまうがあと12年…待ってはくれないか?」
困惑した表情で顔をあげるグレン
ムツキとよく似た深い紫色の瞳を見つめ、レアンは真剣な声音で言った
「今の王政には兵士も疲弊し、民も疑念を抱いている。このままではレキザンも崩壊への道を歩むやもしれん。
私が今の王政を打破する。」
その言葉にグレンは目を見開いた。
決して嘘や口先だけではない。レアンは口にしたが最後、必ずや成し遂げる男だ。
しかし王政を打破するなど、容易いことではない。
「レアン将軍…本気か?」
「長らく待たせてしまうに違いないが、私に二言は無い。新しい王を、民の信頼する王を立てる…だからそれまで…」
「分かった」
レアンの言葉を遮り、グレンは断言した。
「レアン将軍がそういうなら、私たちも頑張ろう。支配下にくだる件は待とう。」