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Oshizuki Building Side Story
第7章 Turning point of love!
 
「な、陽菜、裏切る気!?」
「裏切らないよ? だって親友だもの、ね、杏奈」
「うんうん! 杏奈にとってもえりりん、とっても仲良しだよ?」

 杏奈もにやにやして、ふたりして両肘に顎を載せながら衣里を見る。

「「で? どんな感じなの?」」

 すると衣里は真っ赤な顔で、きょろきょろとあたりを伺うように目を動かした後、両手で顔を覆った。

「私、一生告白なんて出来ないかもしれない……」

 あたしと杏奈は顔を見合わせる。

「衣里が駄目でも、結城の方が……」
「だから駄目なの、あの空気。体の温度が上昇しすぎて脳までとろとろになりすぎて、私が私じゃなくなりそうで無理! 私無理なの!」

 ……つまりは、衣里を極度に蕩けさせる〝なにか〟はあったようで。
 それに不慣れな衣里は混乱の極地にいて、いまだ告白という行為に至っていない、と?

「それは結城ちゃんのやり方が悪いんじゃ……」

 杏奈が苦笑いをすると、途端に衣里は顔をばっと上げて反論する。

「違うよ、あいつは悪くない。悪いのは、突然のことに対応出来ない私の……ぐすっ」

 クールビューティだったはずの衣里が涙目だ。

「最近ため息ばかりついてるんだよ、あいつ。私が面倒臭いから、始まってもいないのに、駄目かも……」

 かなり切実なものを抱えているらしい。

「結城は、衣里のこと理解していると思うけど? むしろそういう衣里が可愛いと……」
「私にそんなことを言うのは、陽菜だけだよ。うう、陽菜が男だったらな……」
「え、あたしが男でいいなら、結城も女でよかったの?」
「駄目、結城は絶対男!」

 ……うん、結城との恋は、いつも冷静なお嬢様ではいられないということだね。――ということを、本人は自覚していないらしいけれど。
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