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Oshizuki Building Side Story
第7章 Turning point of love!
 
「ありがとう陽菜!」

「は、はい!?」

「嬉しくて……嬉しくてたまらない。陽菜に想いが叶ったのと同じくらい、胸が苦しいほど、嬉しい」

 朱羽は……泣きながら笑っていた。
 心底嬉しいというように。

「……嫌、じゃないの?」
「嫌? ありえない。だって、俺と陽菜の子だぞ? 嬉しくないはずがない。男の子かな、女の子かな。ああ、ベビー用品揃えなきゃ。ああ、俺がお父さん……やばいな、頭の中お花畑だ」

 朱羽はひとりでにやけている。
 いつもクールな朱羽なのに、珍しい。
 
「でも、結婚前に妊娠がわかったら、なんと言われるか……」
「別に誰がなにを言ってもいいだろう? どうせ妬みだ。あまりに俺が幸せ過ぎるから。ああ、本当に……」

 朱羽はあたしのパーカーを捲り上げると、黒い水着の上から唇を落とす。

「……早く、顔を見せてね」

 そう、嬉々としてあたしのお腹に語りかけるから。
 だからあたしは――。

「陽菜、どうした具合悪い!?」

 思いきり泣いてしまったんだ。 
 今までのつかえがとれて、一気に放出してくる感情は大きすぎて、あたしは嗚咽交じりに告げた。

「あたし……、朱羽に面倒がられると思って」
「どうしてだよ! 赤ちゃんが欲しいって俺、言ったじゃないか」
「だって、だって……。その場のノリっていうのもあったんじゃと……」
「だったら陽菜は、ノリで俺に応えたのか!?」
「そ、そういうわけじゃないけど。でもやっぱり不安で……」

 すると朱羽はあたしを胸に掻き入れた。

「早く言ってよ。陽菜だけの子供じゃないだろう?」
「……っ」
「だけど俺が早く気づいて上げればよかった。陽菜が不安がっていたのを知らずに、海の方に気を取られてしまった挙げ句、邪推して。すまない」
「違う、あたしが……」
「ねぇ、陽菜。陽菜はいや? 俺の子を産むの」
「嫌なわけないじゃない!」
「だったら、俺と一緒に喜んでよ。不安になることなんてなにもない。悪く言う奴がいれば勝手に言えばいい。だけどそれ以上に、幸せな姿を見せつけてやればいいだけだ。俺達が望んで生まれた子だって教えてやろう」
「……っ」
「俺は男で妊娠女性の変化に疎いから、色々と教えて欲しい。だから無理しないで、一緒に進んで行こう。新米のパパとママとして」

 あたしは涙が止まらず、大いに泣いた。
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