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君を好きにならない
第4章 触ってみてもらえますか?
「向井さん?」


「・・え?」


「僕の話、聞いてます?
今日、なんか変ですよね
考え事・・ですか?」


「あ、いや、なんでもねー
えーと、で、なんだ?」


「だーかーらー交代です」


「交代?」


「はい、ちょっと実験」


「俺とお前が?」


「はい。だから早く変わってください」


「あ、あぁ・・」


いつの間にか
俺が後輩、真琴が先輩という
ごっこが始めることになっていた


とりあえず俺が
流しに向かって立つと
真琴はいきなり俺を背中から
覆いかぶさるようにして
俺の手首をしっかりと握り

そして

「ふ~ん・・」

と呟いたあと
身動き一つしないまま
黙りこくった


あぁ・・


俺の心の中で吐息が漏れる


真琴の熱い体温で溶けそうだ


耳元に感じる真琴の存在と
俺より背の高い男に
覆いかぶさられる感触

俺がいつもこうしてた時
俺に覆いかぶさられてたヤツらは
こんな風に感じてたのか・・・


嫌いじゃねーな


されんのも。



「向井さん・・」


「ん?」


やっと喋りだした真琴は
握ってた手首から手を放し
そして
俺の隣に立ったかと思うと
思いつめたような目で
俺を見つめた


「どうしよう・・」


「何が」


「先輩目線もいいなって・・」


「どした?
今までのパターンと違うじゃねーか」


お前、ネコだし


「・・はい・・そーなんですけど
なんてゆーか
今やってみたら
なんかグーっときて」


「グーっと?」

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