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エリュシオンでささやいて
第2章 Lost Voice
 

 エリュシオンは社内の階段によってふたつの階にわかれ、上の階に企画事業部……あたしがいる育成課、イベント課、音響課、ライセンス課(主に楽曲の著作権管理、原盤権の管理を行う)の四つの課があり、各課に課長とチーフ含めて四人ずつが在籍し、会議室が大小三つと資料庫がある。

 下の階には総務部の経理課と庶務課も、課長とチーフを含めて四人ずつ、営業部の営業課とマネジメント課(主に芸能人のマネージャとなって補佐をする)が課長とチーフ含めて八人ずつ。奥にはほとんどいない社長室、専務室、常務室、手前横には応接室が二つある。

 加えて入り口には、L字状の受付カウンターに重役秘書兼電話応対もする受付嬢がふたり。三つの部には部長がいるため、重役三人抜かしても、総勢四十五人の大所帯。

 本当に大きすぎる会社で、たくさんの経験豊かな社員達が辞職したのに、二年前に引っ越した時、既に新たな社員が補充されており、なにもなかったかのように毎日が過ぎるのは、とても寂しいものだ。

 社長を囲んで賑やかに音楽のことを話し合ったあの日々は、もうない。
 
 あたしの同期は誰もいなくなった。一緒に飲んで騒げる相手は、裏切り者と見なす古い仲間にも、新たな仲間となった中にもいない。

 エリュシオンでは、誰もあたしのことを知るひとがいない。

 ……たったひとりの、一生、顔を見たくなかった例外を除いては。




 
 *+†+*――*+†+*



「はぁ……ダメダメじゃないか……」

 あたしは、山にデモテープやCD、履歴書と写真の束が積まれたテーブルの上で突っ伏した。

 これからミステリアス設定で売り出そうとしている二人組の男性歌手を選べと渡瀬課長に言われたのだが、これが難しい。

 顔がいい男性ばかりオーディションに集められたようだが、歌唱力があるのがいないのだ。

 ギリシャ神話でエリュシオンの最高責任者は冥王ハデスだからと、ユニット名は「HADES」にするらしいが、そこまで決まっているのに、肝心の二人組を決める……同じ曲のオーディションを行った結果が、山にある音源であり、声量があっても音から外れたり、ぶれたり、喉を傷つける危険な歌い方をしていたり、曲とちぐはぐなのだ。

 世は、男女の声が出せる両声や、極端に高い声が出せるものを求める傾向にあるようだが、男の声すらしっかりしていない。
 
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