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青い残り火
第11章 第11章
自分とよりを戻そうとする彼女を鬱陶しいと感じたが、その気持ちは理解出来た。

「私待ってるから。ずっと一馬のこと好きでいるから」

木陰を歩く一馬は顔を上げた。

あの人に何も伝えてない

恋に破れた事は自覚できても、納得できないものがあった。自分の中に芽生えた感情の持って行き場所がなかった。
落ちているセミの死骸を足先で転がしてみる。

こいつらだって泣き叫んでから死んでるじゃないか……

何の憂いも残さない卒業式なら、西崎に気持ちを伝えても許される、と彼は思った。

「先生が好きでした」

せめてその一言が伝えられたなら、そこで終わる事ができる。そうでなければこの気持ちが哀れすぎる。

一馬は前を向き、足を早めた。

頬に触れることも、抱き締めることも出来ない
それでもいい
いいんだ……

消せない想いを抱えつつ、一馬は卒業の日を見据えた。

見返りはいらない
何も求めない


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