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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第2章 ピガールの麗人
ジュリアンの別邸に帰宅すると、縣は光をバスルームへと案内した。
真っ白で清潔なバスタオルを手渡す。
「まずは安酒と煙草の匂いを落として来なさい。…話はそれからだ」
光は形の良い唇を歪めて笑う。
「本当にどこまでもお上品なんだから。安酒と煙草の匂いの女はお嫌い?娼婦みたいだから?」
「そうじゃない。…君には不似合いだからだ」
光は少し驚き、しかしすぐに顔を背けると広いバスルームへと姿を消した。
縣は磨りガラス越しの光に声をかける。
「ジュリアンに何か着替えを借りてくる。後でそれに着替えなさい」

ジュリアンに着替えを頼むと、縣は居間の暖炉に新しい薪をくべる。
弱々とした火が次第に明るく燃え盛るのを確認すると、キッチンに向った。
ショコラとホットワインを用意し、居間に戻るとジュリアンが既にソファで寛ぎ、笑顔で手を挙げた。
「母が若い頃着ていた服があった。バスルームに置いてきたよ。少し流行遅れだけど、あのキモノよりましだよね」
「ありがとう。助かったよ。…ジュリアン、今夜はすっかり君に迷惑をかけてしまったな。…すまなかった」
縣から差し出されたホットワインの杯を受け取りながら、ジュリアンは悪戯っ子のような表情を浮かべた。
「いや、構わないさ。…と言うより…今夜は意外なものが見られて実に興味深かったよ」
「…ん?」
「怒る君さ。君があんなに感情を露わに怒るところを初めて見たよ」
「…そうかな…」
「そうさ。君は絶対に怒らない。例え怒りを感じていても、それを押し殺し決して表には出さない」
「……」
縣はジュリアンの言葉を納得できないように黙り込む。
「けれど今夜の君は、剥き出しの感情をあのマドモアゼル・ヒカルに露わにしていた。…驚いたよ」
縣は苦笑した。
「…私と光さんは相性が悪いんだ。顔を合わせれば大抵彼女が私を皮肉ってくる。昔からそうだ。和やかに話せた試しがない。
…まあ、多分私が嫌いなんだろうな。彼女が愛していた梨央さんの婚約者だったしね。
…今夜は…あんなに馬鹿気たことをする彼女に失望して腹が立っただけさ」
「…ふうん…それだけかなあ…」
ジュリアンが小さく独りごちた時、居間の扉が開き光が入って来た。
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