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belle lumiere 〜真珠浪漫物語 番外編〜
第3章 16区の恋人
「…親の贔屓目かも知れないが、光は美しく賢い。人を惹きつける魅力に溢れている。カリスマ性すら備わっている」
「はい。それはもう…眩しいほどに」
縣は頷いて微笑む。
「光には降るように縁談がある。中にはもったいないようなお血筋の方々からも是非にと…。私は光を麻宮侯爵家の跡取りにしたい。しかるべき相手を婿養子に迎え、麻宮の家を存続させたいのだ。それには外国人との結婚など到底許すわけにはいかないのだ。
縣男爵も分かるだろう。我々貴族が家を…その血を存続してゆくことが如何に困難で大変なことなのか…!私は親の私情だけで光を甘やかす訳には行かないのだよ。
私には麻宮侯爵家を安泰に存続させる義務があるのだ」

縣はじっと麻宮侯爵の話に耳を傾けていた。
「…侯爵のお気持ちはよく分かりました。…ここは少しお互い冷静になってよく考える時間が必要なのではないでしょうか」
「…と言うと?」
縣は和かに微笑み、穏やかに切り出す。
「今、光さんとフロレアンを引き離し、無理やり日本に帰国させても光さんのことです。必ずや眼を盗んでフランスにお戻りになることでしょう。…そうなれば日本の新聞は面白可笑しくスキャンダルとして書き立てるに違いありません。…光さんは日本の社交界の花…。あっと言う間に世間の注目を浴び、折角の素晴らしい縁談も全て台無しになってしまいます」
麻宮侯爵はまるで苦い薬を無理やり飲まされたかのように顔を顰めた。
「…う、ううむ…」
「これでは光さんの将来に傷がつくだけでなく、麻宮侯爵家のお名前にも傷がつきます。…麻宮家にはまだ翠さんというお年頃のお嬢さんもおられますし…」
頭を抱えた麻宮侯爵は思わず叫ぶ。
「ではどうしたら良いのだね⁉︎」
縣は満面の笑みを浮かべ、優雅に胸に手を当てた。
「私にお任せ下さい。…私が時間をかけて光さんとフロレアンを説得いたします。お二人がお互いに最良の選択ができるよう、力を尽くします。
…ですので、麻宮侯爵。今しばらく光さんをこのままお預かりさせてはいただけないでしょうか?」
「…ううむ…」
麻宮侯爵は眉間に更に深く皺を寄せ、腕を組んだまま考え込み、眼を閉じた。

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