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愛憎
第2章 再会と過去
『こーらー!まこちゃん、また抜け出してー!ダメって言ってるでしょー!』

そう誠に怒っていたのがゆうちゃんだった。

誠は小児急性白血病で、父が入院した3ヶ月後から入院生活を余儀なくされていた。

小さい子どものがん細胞は驚く程の速さで身体中に回って行く。

腕や足など転んでも、普通の健康体なら青アザが出来てしまうところだが、当時の誠にとっては命取りになる。

『お友達見つけたのー』
と、怒るゆうちゃんに無邪気に笑ってみせた誠は、ゆうをげんなりさせたが、誠やゆうの為に塗り絵や折り紙を与え、激務の中、時間を見つけては、誠の病室に訪問し、本を読み聞かせてたり、折り紙を作ったりと、誠が飽きないように務めた。

萌に出会ってからは、萌の父の現状を、ゆうは萌の父の担当の看護師より把握していた為、誠も父が無菌室にいない時以外は、ほんの少しでも、萌の父の気が休めれば…と、萌の父の所に誠を連れて行き、本の読み聞かせを父にお願いしたりした。
萌の父は同じ病気で苦しんでるのに、無邪気に笑う誠に顔を綻ばせ、段々と顔つきも穏やかになっていた。


誠の母も、父と同じ病気で、誠が生後1歳の時に亡くなっていた。

その為、誠の父も、20歳離れた年上の姉も、誠が母と同じ病に倒れた事に悲しみに暮れていた。


誠の父は、大手の商社で通勤しており、誠が発病後から仕事は抑えるが、やはり激務で、お見舞いにすら来れない状態もたまに続いていた。

その為、付き添いで来るのはいつも姉の優衣子だった。

優衣子とゆうは、同じ大学で、仲の良かった友人同士。
優衣子は違う病院に就職していた。

日勤終わってすぐか、夜勤明け、休みの日、へろへろな状態な時に病院に来ていた。

友人のゆうが、それを咎め、付き添いを週1ペースで。と言い、その代わり担当の私が付き添う。と姉に言い放った。

誠はその時の事を良く覚えている。


でも…と言い悩む優衣子に対し、ゆうは
『ホントは一人の患者さんに肩入れなんかしちゃいけないけど、その前に私はあんたの友達よ!友達が大変な時に、私は無視出来ないわ!それに、まこちゃんの担当は私よ!』

と、叱る時以外はいつも穏やかなゆうが、姉に仕事を優先にしろ、と、勝気に言い放ったのだ。

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