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それを、口にすれば
第17章 それを、口にすれば
「ちょっと! 汚い口でうちの人の名前を呼ばないでよ……! さっきまでいろんな男とキスしたり、フェラしたり……さっきなんて熊ちゃんに中出しされて……」

「理沙子!!」

誰も耳にしたことのないような結城の怒鳴り声に、空気がビリビリと痺れるようだ。

「汚いのはお前の方だ……そして俺も。でも、優雨を愛しているこの気持ちだけは確かだと言える。これからは……自分に対し正直に生きていこうと思っている」

「別れるなんて嘘でしょう……」

青ざめ、声を震わせるその様子は、いつも見せるような自信に満ち溢れた理沙子とは別人だった。

「こんなの嘘だわ……目を醒ましてよ……」

「目を醒ましたから決断できたんだ」

結城の目には迷いが無かった。

「愛が無いのに結婚したのは本当に申し訳なかったと思うよ……でも、もう無理だ。理沙子も目を醒ませ」

「でも……」

「お前が昔……彼女にしたことも調べさせてもらったよ。ここでそんな話をしたくはないだろう? これ以上……言わせないでくれ」

事の成り行きを見ていた良介が、ふらつく理沙子を心配し近づいて行く。

「り、理沙子さん……?」

しかし理沙子が良介の方を見ることはなかった。
ただ……結城を失うという現実が受け止められないと心が叫ぶ。

特別な存在……手に入れたくて堪らなかった存在……。
そして、妻になっても手に入ったようには感じられなかった……遠い貴方。

その心を手に入れた優雨……。
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