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それを、口にすれば
第17章 それを、口にすれば
〝本当は貴方じゃないと駄目なの……!!〟

そんな風に言えたならどんなにいいだろう。
しかし、理沙子の口から出たのは全く別の言葉だった。

「そんなこと言うの……許さないわ」

「……これ以上話すことはないよ、理沙子。優雨は俺が連れて行く。そこに倒れている男も、目を覚ましたら一緒に医者に連れて行ってやるといい。暴力は嫌いだが……あちらから手を出して来たんでね。少し強く殴り過ぎてしまったようだ」

「指図しないで……」

「それから、彼らには俺のやり方で報復させてもらう。この物件をどう料理させてもらうか……考えるのが楽しみだよ」

結城はそう言いながら、上着をしっかりと着せ、抱き上げてくれたまま歩き始める。

このままどこに行くのだろうか。

しかし、優雨には一つ気がかりなことがあった……それは、この場に残していく夫、良介のことだ。

「結城さん待ってください、どこへ……」

「信頼できる医者……婦人科に連れて行くから」

アフターピルというものを聞いたことがある。
そんな心配を結城にさせてしまう自分と、自分に起きた出来事が恨めしかった。

でも、ひとつだけはっきりさせておかないといけないことがある。

「夫と……一言だけ話をさせてください……」

「優雨……」

「どんな人だとしても……今、私はあの人の妻なんです」

結城は黙って手を離し、優雨は一人で良介の前に立った。
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