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夜伽月 よとぎづき 
第7章 秘密
ーーー 融との約束の日。

怪我人の治療で洞窟では、人の出入りが激しい。

…唐変木が言った通り、これなら逃げるチャンスはあるわね。

「夜伽様?大丈夫ですか」

手を止めてぼーっとして居る月に声を掛けてきたのは小坊主だった。

「ごめんなさい。大丈夫よ」

二人が逃げた後、どんな仕置きをされるかもしれない。今度こそ殺されるかも知れない。鬼鎧の事が、恐ろしいのは今も変わらない。ただ負傷したもの達をそのまま残して行くのは、どうしても出来なかった。

「朝ご飯を食べ過ぎですよ」

女達が、差し入れを持ってきてくれるのだ。勧められると食べずには居られない。

「せっかく色々持ってきてくれてるのに、食べない訳にはいかないもの」

あの子には伝えないでおきましょうと清賢と話し合ったので、小坊主は脱出計画を知らない。正直で臆病な子だ。きっと緊張してしまうに違いない。

「そのうちに海に戻っても、太り過ぎて竜宮城へ戻れなくなりますよ」

「…」

いつもなら言い返す筈の月が何も言わないので、小坊主が頭を傾げた。
清賢は、いつもの様に物静かに亡くなった者の為に経を唱えていた。治療のかいなく亡くなる者も大勢おり、無縁の者は、遺体は近くの池や川に投げ捨てられた。それは主に石打ちとその部下達の仕事だ。

「さぁてと。今日も何か面白いもんがあると良いなぁ」

そして今日も遺体の運搬作業があり、朝から石打ちは、遺体を運んでははしゃいでいた。

「信じられない…少なくとも仲間が、亡くなっているのに」

黙々と作業をする者の中に、石打ちと同じく楽しそうに仕事をしている男が数人いた。

「アイツらは 狂ってる..仲間内でも嫌われ者なのさ」

女が通りすがりに小さな声で月に囁いた。昼食後は、小坊主に留守番を頼み、山へ清賢と薬草を取りに行くことになっていた。最初は主に清賢が見張りものと一緒に取りに行っていたが、最近は一人で行くことも許されていた。近くの山の薬草は取りつくしてしまったので、遠出をしなければならない。

「さぁ…夜伽様。日の明るいうちに…」

「ええ…お願いします」

月は今回初めて薬草学の勉強の為に、清賢との同伴を許された。


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