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夜伽月 よとぎづき 
第7章 秘密
「ご…ごめんなさい」

月は慌てて謝ったが、女は何も言わず深々と頭巾を被り直し、再び歩き出した。

点々と続く松明の光が洞窟を薄暗くゆらゆらと照らしていた。

角を曲がりすぐに煌々と照らされた大きな広間の様な場所に通された。

「おお…来たか」

野風と軛、そして鬼鎧が待っていた。

沢山の着物や壺、小判などが部屋の奥に置かれており、床にはびっしりと熊の毛皮が敷き詰められていた。

上座で鬼鎧が野風と軛を見下ろすように座っていた。

案内した女に促されると、下座に月は座らされた。食事用の膳は乱雑に並べられていたが、山菜や獣の肉、川魚など種類が豊富だった。

鬼鎧は徐に大きなどんぶりを差し出すと、野風がすかさず傍にあった酒の壺を抱えた。

「野風…おめぇは良い。夜伽…」

軛は、面白そうなことが始まるぞとばかりに、野風と月の顔を交互に見た。野風がじろりと睨んだが、壺を月に素直に渡した。

…いっ。

足元が見えないことを良いことに野風は月の足をどさくさ紛れに踏みつけた。

「ふんっ」

野風はそのまま不服そうに自分の席へと戻った。

…凄い…睨まれてるんだけど。

月は、仕方が無く鬼鎧の傍に座り酒を注いだ。
その後も、野風は月を穴が開くほど睨みつけていた。鬼鎧はそんなことも気にせず、ぐびぐびと酒を飲んだ。

「ここの生活にも…慣れたか?」

「ええ。慣れたけど…折角なのでお願いしたいことがあるんだけど」

野風はそれを聞くとぎりぎりと自分の唇を噛んだ。

「おめぇは色々注文が煩せぇな」

鬼鎧は干し肉を太い指で摘まんで口に放り込んだ。

「怪我人の敷物をもう少しましなものにしてあげて?」

土の上に敷かれた薄い敷物の上に皆寝ており、焚火が四六時中燃えているとはいえ、夜は少々寒かった。

「あら…だったらあなたの着物を脱いで、敷いたげりゃ良いじゃなぁい」

軛がけらけらと笑った。

「それで済むのなら良いけれど、怪我人がいっぱいいるのは軛さん。あなたも知ってるでしょう?」

月は挑発になど乗らないと決めた。余分な争いごとは避けたかった。
















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