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夜伽月 よとぎづき 
第8章 鬼灯
「あの…ごめんなさい…お金持って無いの」

水琴窟で引き篭もりだったし、買い物など一度もしたことが無い。それに居候の癖におこずかい迄だなんて流石にお願い出来ない。

「良いよ!良いよ!食べていきな」

娘は、そう言うと母親と店の奥へと入って行った。

「ごめんなさい」

客の視線を感じつつ月は、この隙を狙って席を立ち、慌てて店を出た。

「こらっ!また勝手に家を飛び出して」

店を飛び出す瞬間に、出会い頭にかんざし婆にぶつかりそうになった。

「わっ‼︎」

どうやら月の目撃情報を辿って来たらしい。

「油断も隙もありゃしない。お菊の所で聞いたら、随分前に出たって言うじゃ無いか」

「ごめんなさい」

そう言うと、かんざし婆はすたすたと歩き出した。慌てて月はその後ろをついて行った。

「婆さん。この間は、嫁が世話になってありがとね」

この辺りでは、かんざし婆は有名人ならしい。ひっきりなしに町民が挨拶をして来る。

「やぁ。婆さん!松と梅は、6つになったよ」

「ほう。もうそんなになるのかい?時の経つのは早いねぇ」

…松と梅はいるのに竹がいないとは、これいかに?

話したそうにしている人々を素っ気なくあしらい乍ら、水琴窟とは別の方向へと歩き出した。

「あそこは三姉妹だったんだけど、真ん中の竹が去年 肺病で死んだんだ」

月の疑問を察したかの様にかんざし婆が言った。

「産んでも育つのは、半分くらい…半分ならましなほうだ」

乳児死亡率が非常に高いと聞いてはいたが、改めて聞くと驚きだ。

「あんたの国ではどうだい?」

現代では、先進国の中でも日本が一番死亡率が少ない。

「世界の中でも日本は、赤ちゃんの死亡する率が低いんですよ」

長い間、アメリカを抜いて断然トップだ。

「へぇ…凄いねぇ」

かんざし婆は、未来の話をすると途端に生き生きとした顔になる。


「あの…何処に行くんですか?」

「ついて来りゃわかるよ」

町を抜けて海の方へとかんざし婆は歩いた。

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