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夜伽月 よとぎづき 
第8章 鬼灯
「また攫われたりしたら、困るからね。あんたがこっそりと抜け出す前に喜平のとこに行く事に決めたのさ」

喜平が住む小さな小屋はすぐに見えてきた。せり出した岬の周囲に集落が出来ている。

…あ。ここは!

月は思わず息を飲んだ。その地形には見覚えがあった。ただひとつ違うのは、岬の先の祠が無いこと。

「私…ここ覚えてます!!」

先を歩いていたかんざし婆を追い抜いて崖の方へと駆け出した。

「いかん!それ以上先へ行ってはいけない!崖から落ちちまうよ!」

それを聞いて月は慌てて止まった。

…確かにここには祠があったのよ。

しかし、ただゴツゴツとした岩が転がっているだけだった。

「私は、この近くで潜ってたんです。そしたら突然大きな渦に巻き込まれて…」

「浮かんできたところを、喜平が網で掬ったんだね」

かんざし婆は、静かに言った。

「この場所はね、潮が沖へと流れてるんだ。漁師たちはここから船を出せば、漕がずに遠いところまで行けるからね」

…そういえばそんなこと言ってた。

「さあこっちだよ」

落ち着いた月を確認すると、かんざし婆はすたすたと歩きだした。喜平の家は岬からは一番奥まったところにあった。明るい日差しに照らされて小屋の前には網が吊るされており、風でゆらゆらと揺れていた。小屋の後ろには物置小屋があり、漁に使うものが入っているようだった。

「どうやら居るようだよ」

ちらりと干された網をみながら、かんざし婆は大きな声を出した。

「喜平!休んでるところ悪いが、ちょっと良いかい?」

――― がらり。

小屋の戸はすぐに開いた。かんざし婆の後ろの月を見るとちょっと驚いた顔をしてから、ぺこりとお辞儀をした。

「こんにちは」

月も慌てて頭をさげた。喜平は、小屋に入れと手招きをした。

「突然来て悪いね…夜伽がお前と話をしたいと言うもんでね」

かんざし婆は、まるで我が家の様にずかずかと小屋へと入って行く。

「え…っと」

月が躊躇するのを見ると、喜平は再びどうぞどうぞと手の平を玄関へと向けた。


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