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夜伽月 よとぎづき
第3章 四ツ目屋
ふたりが待つ茶室へと向かう途中、かんざし婆さんが追いついた。
「すまぬな…ここの産婆の仕来りのことを話さなかったお陰でこんなことになっちまって」
いつもの口うるさいかんざし婆の姿は無く、水琴窟での仕事の時とはまた違う、慈愛に満ちた優しい顔をしていた。
「今までどうしてきたんですか?」
「わたしゃ間引きは出来ん。養子先を探して貰う」
水琴窟のように閨房屋に産婆が居る所もあるが、他のところはどの様にしているのかは企業秘密だとかんざし婆さんは言っていた。
…それを知っててあの唐変木が呼んでくれたってこと?
「あんたは、ここの仕来りに慣れる必要は無いんだよ?生きている世界が違うんだ」
かんざし婆さんの言葉は、月に諭すように温かかった。
百歩譲って現代とは違い、沢山の子供が生まれ薬や医療も発達しておらず、淘汰されると分かってはいるものの、月は助産師として胸が潰れそうだった。
「私はまだ新米産婆だけど、関わった赤ちゃん達は、それでも元気で健やかに育って欲しいと思うんです」
「それが分かればあんたも立派な産婆だ」
小さな皺と染みが多い手で、月のお尻をバシッと叩いた。
…い…痛い。
「これからは、水琴窟も産婆稼業も忙しくなるよ。まぁこの問題が、上手くいけば…の話じゃがね」
かんざし婆は、ひひひと笑って見せた。
「すまぬな…ここの産婆の仕来りのことを話さなかったお陰でこんなことになっちまって」
いつもの口うるさいかんざし婆の姿は無く、水琴窟での仕事の時とはまた違う、慈愛に満ちた優しい顔をしていた。
「今までどうしてきたんですか?」
「わたしゃ間引きは出来ん。養子先を探して貰う」
水琴窟のように閨房屋に産婆が居る所もあるが、他のところはどの様にしているのかは企業秘密だとかんざし婆さんは言っていた。
…それを知っててあの唐変木が呼んでくれたってこと?
「あんたは、ここの仕来りに慣れる必要は無いんだよ?生きている世界が違うんだ」
かんざし婆さんの言葉は、月に諭すように温かかった。
百歩譲って現代とは違い、沢山の子供が生まれ薬や医療も発達しておらず、淘汰されると分かってはいるものの、月は助産師として胸が潰れそうだった。
「私はまだ新米産婆だけど、関わった赤ちゃん達は、それでも元気で健やかに育って欲しいと思うんです」
「それが分かればあんたも立派な産婆だ」
小さな皺と染みが多い手で、月のお尻をバシッと叩いた。
…い…痛い。
「これからは、水琴窟も産婆稼業も忙しくなるよ。まぁこの問題が、上手くいけば…の話じゃがね」
かんざし婆は、ひひひと笑って見せた。