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夜伽月 よとぎづき 
第5章 鬼鎧の洞窟
「ん…あ…。」

薄っすらとした意識の中で甘い香りと獣の臭いを感じた。目を開けると、真っ白な綿毛かと思うようなところに寝かされていた。

「鬼鎧様ぁ…。」

…怠い。キガイって…あの人の名前?

月は体を起こし見回した。そこは、大きな薄暗い洞窟の中だった。夏だというのに涼しい。大きな獣の毛皮が敷き詰められており、真っ赤な着物が掛布団代わりに月に掛けられていた。

「へへへ…野風(のかぜ)もっと動けやい…。」


しっかりとした格子の向こうでは、艶めかしい女が大きな男の胡坐の上に向かい合わせに座り、滑らかに腰を動かしている。女の背中には大きな4本爪の龍の入れ墨。ふたりの側には大きな火が焚かれていて、時々パチパチと爆ぜた音を立てた。

――― ゴホゴホッ。

月は思わず咳がでた。思い切り締め付けられた首の皮膚に触れるとヒリヒリと痛んだ。

「よう…起きたか」

それは清賢を足蹴にした先ほどの山賊だった。月を見ると鬼鎧は、にやにやと笑ったが、その行為をやめるどころか女にもっと動くようにとせかした。

野風と呼ばれた女の甘い声が洞窟内に響く。

どこからともなく男たちの冷やかすような笑い声が聞こえた。

「こ…ここは?和尚さんたちはどこ?」

呼吸をするたびにひりひりと痛む喉に触れながら、月はかすれた声で聞いた。

「ああん…鬼鎧様ぁ…そこそこ…もっと激しくしてぇぇ」

ふたりとも月の言葉には答えず、大きな影と小さな影が灯りの前でゆらゆらと怪しく揺れて、照らし出された接続部は、白濁した液体でテカテカと光っていた。


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