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夜伽月 よとぎづき 
第5章 鬼鎧の洞窟
「小坊主さん…酷い熱」

眼光鋭い鬼鎧の手下達は、きちんと言われたものを持ってきた。洞窟は奥へ行って奥へと繋がっているらしく、大勢の人達の声が聞こえて来た。どうやら、宴会でもしているらしい。

小坊主の傷の様子をみた月は息を飲んだ。

…思っていた以上に深い傷。

しっかりと押さえてないと傷口からは、じわじわと血液が滲んで来る。

「火箸で焼きましょう…」

清賢は、静かに言った。

「そ…そんな乱暴な…」

それを聞くと小坊主は、怯えた様な表情になった。

「阿片を吸わせれば、少しは楽になるやもしれません」

このままでは、間違いなく失血死してしまうだろう。だとしたら、怖くともやらなければならないと月は思った。

「絹糸と針を…それで傷口を縫い合わせましょう」

「縫い合わせる?その方法をどこで?」

清賢は、じっと月を見つめた。

「ええ。やった事は無いけれど、やり方はわかるわ」

「麻糸ならまだしも…夜伽様は、ご存知無いかもしれませんが、絹は高価なもので私ども庶民は取り引きを制限されておりまする」

「え…そうなの?でもほんのすこしでいいのよ。沢山はいらないの」

「養蚕をしている家も、町へと行けば見つかるでしょうけれど…この様な山奥では...」

…どうすれば良いの?

考えている時間の余裕もなさそうだ。

「お侍の家なら、絹糸を分けて貰えるかしら?清賢和尚。手紙を書いて貰いたいの」

「手紙!?」

「ええ。きっとあの人なら助けてくれる筈」

清賢は戸惑いながらも、見張りに頼み月に言われるがままに手紙を書いた。

「それが駄目な時には…別の手段を考えましょう」

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