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大人なの。
第2章 糸
「悪い…」

立ち上がり、彼女も引き起こしながら跡を付けてしまったことを詫びる。
フワッと肘を隠したカットソーは七分丈で変色した手首までは隠してくれなかった。
これでは周囲の好奇な目を集めてしまう…

昼に会食を同席する二人も下世話な話は大好物に違いない。

彼女が常務と言ったのは、管理統括部の前川常務の事だと思う。
スラッとした体格の清潔感漂う紳士だ。
昨年役職に登用され、それまで活躍した営業職の一線からは退いたが、その人脈と影響力には今後も期待する所が大きい頼れる男。
時々世間話に上る趣味はバスケットで、未だに大学のOBサークルで集まってはプレイヤーとして楽しんでいると聞く。
激しいスポーツを楽しむ体力があるくらいなのだから…
きっと男としても現役なのだろうと、心配になる。

昼の会食とはいえ接待色の伺える相手だ、女性を同伴して赴くことのメリットは計算ずくだろう。
何人もいる女性社員の中から声を掛けると言うことは、少なからず本人の好みも反映しているものだ。

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