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大人なの。
第1章 波
じゃあ何なの?
抗議の視線で見つめると右手首が更に強く握られた。

しばらく無言で睨み合うと捕まれていた右手から圧迫感が消えた。
痛みが無くなるとじわじわと視界が歪んだ。
泣き虫は自覚してる、でも、泣き落としたい訳じゃない。
目尻に溜まり始めた涙が流れないように目を見開く。

力を緩めただけで、離す気配のない指に左手を掛ける。
何故か震えて力が入らない
こんな事でびびっている小心者の自分に腹が立つ。
朝イチで連行される覚えも、
親の敵のように睨まれる覚えも
自分にはない。

右手を引き抜こうと奮闘している様子を
彼は静かに見ていた。
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