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大人なの。
第1章 波
中央に置かれた大きな応接セットのソファーに投げ付けるように私を座らせ、鬼はやっと正面から私を見据えた。
握られたままの右手は未だに解放して貰えず、ジンジンと痺れるような痛みを感じる。

「就業時間中ですけど?」

明らかに私的な感情でここまで私を引き摺ってきた彼に険を込めた声を掛ける。
ここまで小走り程度の早さだったが、運動不足の私には十分息が乱れる200メートル走だったし、ただでも身長差のある大男に睨まれて心臓がドキドキしてるけど…
そんな素振りは見せない。

「承知している!」

普段は男らしくて耳障りが良いと思う声が
ビリビリと響いた。
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