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友達でいるしかない
第6章 文香の幸せ
校内で文香と会うことはもちろんある。
だけど、俺はあいつを見ない。
もちろん、文香が俺を見ることもない。
どんなに近くをすれ違っても文香の中で俺が消えるように存在すら消す。
それでも話さなければならない場面もでてくる。
そんな時は、ただ単に隣のクラスメイトとして接した。
必要最小限に近づかずしゃべらない。
それで文香も何も言わない。
文香の中で俺が消されていくのがなんとなく分かる。
寂しい気もするが、それが文香の幸せなら俺は受け入れるしかない。
俺が自分自身で壊してしまったことだから…

2学期も終わろうとしているとき、文香が彼氏と別れたと聞いた。
それとなく様子をうかがってみるが、そんなにショックを受けていない感じがした。
別れた理由など知る由はないが、あまり落ち込んでいないことにホッとする。
声をかけて慰めてやりたいと思うけど、俺にはもうそんな権利はない。

それでも一人泣いていないか傷ついていないか気になり目が追ってしまう日々が続く。
もちろん近づかない。
文香にばれないようにそっと見守る。

高校3年もあっという間に過ぎていく。
良いことも悪いことも全て懐かしく思える。
ただ心残りなことは文香の事。
だけど何もしてやれない口惜しさだけが残る。

卒業式当日は澄み渡った空が日中をポカポカ陽気にする。
最後のブレザーに身を包み最後の学生生活を噛みしめる。
大学に行かない俺は就職が決まっている。
だから、学生生活はこれが最後。
そう思うと社会にでてからの事に不安と期待がこみあげてくる。
水仙の匂いが体育館の中を包み込み学生生活に幕が下りる。

廊下で友達と笑ってしゃべっている文香の姿を遠くから目に焼き付ける。
卒業したらもう会うこともない。
ばったり出会えることもなくなる。
たぶん、これが最後。
泣かせた顔より、笑顔の君を覚えておこう
と遠くから見守った。
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