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恋いろ神代記~神語の細~
第5章 真雪
こんな暮らしをしていれば、好奇の目に晒されることも多いだろう。いやそれよりも──果たしてどれだけの人間が、巫女付きの童だと認知しているのだろう。今はそれさえ、忘れられているかもしれない。
(……どちらにしても)
煩わしく、嫌なことだ。この真白の心を、掻き乱されるのは。
 だからその労をねぎらい、せめてすぐに温かい家に入れるようにと、残された禊は玄関前の雪をかいた。
 そういえばこの雪は、音をも吸い込むのだという。ならば耳の奥のあの音は、その雪が吸った音の残滓に違いない。何に煩わされることもない静寂を、自分達は確かに得ていたのだ。
 四季のうち三を喪ったことは、少し物悲しい。が、それでも主は残された一の生活をただ静かに望み、いつまでもいつまでも足の立たない我が子と共に過ごしている。

 軒先まで雪をかき終えて庭へ回れば、その主たる巫女が縁側で赤子を抱いたまま、ぼうっと腰を下ろしていた。
 庭に面した主の部屋は、もし 三季があったなら今頃は日だまりに心地好い温もりを得ていただろうに、今となってはその庭さえ松の幹がかろうじて形として残る程度で、あとは瓦塀の黒と白で囲われている。色も刻も無くしてしまった。死骸の世界。
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