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欠片
第1章 17歳の頃の俺たち

サエキの吐息と唾液、リアル・ラブドールの愛液が混ざりあう音がする。それから、リアル・ラブドールの泣き声。10分くらい経つと表情にパターンがあることに気付いた。
涙を溜めて惚けた顔をしているときは優しく舐められている、あっあっあっと声が出ているときはクリトリスを吸われている、眉間に皺を寄せて泣いているときはクリトリスを吸われながら舐められている。
AVでは見られない生のセックス。この動画を売ったらどのくらいの値段になるのだろうか?

 と、こんな感じの爛れた高校生活を送っていた俺たちは20代を過ぎ、30代を過ぎ、もう42歳になった。あの頃の動画データはパソコンの中で厳重に保管している。
 結婚をしてもう20年近くになる。俺は22歳のときにデキ婚をしたから、若い父親だ。男の子と女の子の双子は20歳になり、普通の幸せを満喫している。
 娘が成長するにつれて、リアル・ラブドールのことを少しだけ考えるようになった。もしも自分の娘があんな扱いをされたら……俺は間違いなく男どもを殺すだろう。それもこの世で一番ひどいやり方で。
 俺は娘に対してかなり過保護に接している。送り迎えもするし、夜遅い時間帯は出歩かせない。学校でいじめを受けていないか、男子生徒にいたずらされていないか、とにかく目を光らせた。門限は9時、結婚するまでは女友達でも泊まりは許さない、という風に。
 息子にも女に対する扱いを教えただけで、門限は設けなかった。息子は学校の仲間と勉強をしたり、ゲームをしたり、娘よりは自由を謳歌していたようだ。
 娘が17歳の頃、こんなことを言った。

「お父さんは変だよ。どうしてオサムは外泊できて、私はできないの?どうしてそこまで心配するの?友達に話したらお父さんは心配しすぎだって」
「いいか、リナ。女の子は常に危険があるんだよ。リナを信用していない訳じゃないんだ。でも、万が一ってこともあるんだよ。お父さんはリナに悲しい思いをさせたくないから、色々ダメだというんだ」
「私に何が起こるっていうの?」
「……とにかく外泊はダメだ。友達でもだ」
「……」

リアル・ラブドールの顔がいつしかリナにすり変わる。泣きわめき、男に体を触られ、舐められ、喘ぐリナの顔。
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