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彼の秘密
第19章 テスト準備期間が来ました
「先輩、ちゃんと閉まってましたよ」
風呂の栓は閉まってたどころか、風呂場は浴槽も窓も壁もぴかぴかに磨きあげられていた
手抜かりがない彼に限って栓をし忘れることなどないはずなのに、見に行けと言うなんて心配性だなぁ

・・・何で俺なんだろ
もっと相応しい人が居ただろうに

ソファに腰をかけながら本を読んでる彼に駆け寄る
「先輩」

「暁」

「えっ?」

「暁って呼んで?」
パタンと本を折り立たんで眼鏡越しに黒い瞳が覗く

「暁・・・さん」
やはり呼び捨ては難易度が高い
「さんって固いなぁ」
あははとふにゃって笑う表情が心臓に悪い

「本当に、わざとやってます?それ」

「ん?何が」

「はぁ、そんな笑顔他の人に見せないで下さいね?」
髪をぐしゃっと掻きながらとさっと左横に腰を降ろす

「そんなに変だった?」

「違います、それを見せたら女子が嫌と言うほど寄ってくるんで、それよりその本何ですか?」
彼が手にしている本を指差す、表紙は指紋を付けたくないのかブックカバーで覆われていた
「これ?欲望っていうやつ」

「それはまたドロドロとしてそうですね」

「うん、ドロドロ」

「そういう系好きなんですか?」

「んー、まぁ好き。」

「へぇ、今度借りても良いですか?あぁでも本を読むの遅いんですけど」

「いいよ」

「え、いいんですか?返すのかなり遅くなりますよ?」

「うん、別に返さなくてもいいし。
これ何回も読んでるやつだから」

「あ・・・そうなんですか、じゃあ今度お借りしますね!」

「うん」
と、先輩は肩に頭を乗せてきた
「小さいなぁ」

「なっ、小さくない!」

「あっ」

「ん?・・・あぁ!すみません」
敬語が外れたことに気がつかなかった
謝るような事でもないが、反射的に謝る
「ううん、嬉しい」
気持ち良さそうに微睡む彼にずっと肩を貸してあげたい

ぴーぴーぴー

「あっ沸いちゃった。ゆっくり入ってきな」
とすっと肩から重さが消えた
ちょっと勿体ない
「じゃあお借りしますね」
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